木彫っちゃおうよ、愛のままにさ
あ~~~、なんか作りたい気持ちかも。
そうだ、木彫りしよ。
用意するもの
今は「何かやりたい」と思ったら、必要なものはすぐに手に入る。こう書くとSFっぽいが、要するに通販だし物流網の発達の恩恵でしかない。
木彫りに必要なものは2つ。削る道具と木材だ。
それぞれAmazonで購入。彫刻用の木材セットが800円、彫刻刀が600円だ。
ピンキリがあるから、こだわればこだわるほどお金がかかる。
今回は木彫りの衝動を鎮めるという目的なので、なるべく安いものをチョイスした。
彫刻刀は基本の3本セット。切出刀、三角刀、中丸刀。
これだけあれば、とりあえずなんとかなるだろう。
で、なにを彫るんだい
今回は、私が10年前に生み出したマスコットキャラクター「まぜあんくん」を立体化しようと思う。
4コマまんが等で大活躍のまぜあんくんだが、描きやすさを追求した結果、あまりにも立体化に向いていない見た目をしている。
特に、髪の毛。どうなってんだよこれ。
とりあえず3方向から描いてみたが、立体化に対して不安しかない。フィギュア化が決定した漫画家とかもこんな気持ちなのだろうか。
まずは下書きから
まあ木材もいくつかあるし、とりあえず始めることにしよう。
まずは下書きだ。直方体の木材にシャープペンシルでまぜあんくんを書き込んでいく。
人生における筆記具は、エンピツ→シャーペン→ボールペンと進化していくので、久しぶりのシャーペンだ。
最初に顔を書いたらあまりにも胴体が長くなりそうだったので、下の2cmは台座ということにした。
ここまで来てもまだ完成形が見えず、不安は募るばかりだ。
とりあえず彫り始める
いつまで悩んでいてもしょうがないないので、とりあえず彫ってみよう。上手くいかなかったら、そのとき考えればいい。
失敗してもいいと開き直ることこそ、人生を楽しむコツだ。
まずは、お祭りの型抜きの要領で、周囲を彫り進めることにする。
最初から立体を目指すのではなく、まずはイラストに厚みを持たせた状態に持ち込む作戦だ。
先の見えないまま彫り進めること1時間。とりあえず右側の余白を取り除くことができた。
5月の異常な気温により部屋は蒸し暑かったが、木くずが飛ぶため扇風機は無しでの作業。
彫刻刀を握る指先が若干しびれてきたが、気にせず続ける。
左側も同様に。作業が荒くなってきているが、まあひとまずよしとしよう。
ここからいよいよ、立体感を出しながら彫っていく、取り返しのつかない領域に入る。
石化する途中みたいになってきたな。
しかし、木彫りのテクスチャがいいかんじだ。
もう後戻りは出来ないので、どんどん彫っていく。
朧気だが、完成形が見え始めた。
顔は最後に入れようと思うので、いちばん複雑な腕部分の造形に取りかかる。
アゴと腕のあいだが狭く、彫刻刀がうまく入らない。もう少し小さい刃が入ったセットにしておけば良かったか。
忍耐強く彫り進める。
なんとか形になった。
もっと滑らかにしてもよいが、これはこれで古代遺跡の遺物のようなので、顔を入れて完成にする。
うん、なかなか良い出来だ。イラストを忠実に再現している。
完成後のお楽しみ
完成したらやることは1つ。撮影会だ。
色白な木材だが、それが逆にデスクに彩りを与えてくれている。
隣にあるロダン作「地獄の門」と相まって、厳かでアカデミックな雰囲気だ。
角度によっては、しょぼくれた犬のような表情にも見える。
美術館で1つの作品を何十分も見続けるのは、きっとこういう発見があるからなのだろう。
さらに、別のフィギュアと並べることで、より世界観を深められる。
大物アーティストのCDジャケットみたいな構図に、胸が躍る。
神妙な表情もまた、深遠なバックストーリーを想起させられる。
さいごに
勢いで始めた木彫りだったが、思いのほか楽しむことができた。
彫っている最中は目の前の木片にだけ集中する。自分との対話は禅の思想にも通じるし、円空が仏像彫りに熱中(生涯で12万体彫ったらしい)した気持ちも、少し分かる。
なにより、図工や美術で彫刻をやってこなかった自分にとって、新たな刺激となった。
きっとこんなことは、世の中にまだまだある。
それを追い求めるのが人生なのかもしれない。
みなさんも、良い木彫りライフを。
オマケ。後ろ姿はこんなかんじ。