桃太郎は、きび団子に何を感じたか

日本人のほぼ全員に刻み込まれた物語『桃太郎』。

桃から産まれたり動物を手下にしたりとキャッチーな要素が多く、悪しき鬼を倒すというシンプルな勧善懲悪ストーリーも人気の要因だ。

元々の話では、桃を食べて若返ったお爺さんお婆さんの子供が桃太郎ということらしいが、正直どちらでも構わないと私は思っている。

鬼に関してもそうだ。民俗学などの文脈では「鬼=異邦人」として語られることが多いが、それは背景でしかなく桃太郎のストーリー自体の効力に一切関係しない。

では、桃太郎の効力とは? 桃太郎のストーリーは、何を我々に伝えたかったのか?

今回は、そこを深掘りしていきたいと思う。

(気持ちだけで書いているので、ちゃんと研究している人が言ってることのほうが正しいです。ごめんなさい)

『桃太郎』は、愛と勇気の物語

昔話や童話は、子供への説教という側面が強い。

浦島太郎は互助意識の大切さや時間の貴重さを、舌切り雀は強欲の罪深さを伝えている。(もちろん単純な娯楽としてのお伽話も存在するが、勝手に意味を見いだすことは難しくない)

さて、それで言うと『桃太郎』のテーマとは何だろうか。

私は、愛と勇気だと思う。

この文言を聞くとアンパンマンが頭を過るが、それとは若干異なる「愛と勇気」だ。

アンパンマンでは、住民の空腹を満たし生活を守る、普遍的な人間愛と自己犠牲の精神を説いている。

『銀河鉄道の夜』で、ほんとうの幸い=自己犠牲を謳った宮沢賢治と同じだと言えるだろう。

対して桃太郎は。

注目すべきは、主人公の桃太郎ではなく、そのお婆さんの方であると私は考える。

お婆さんから見る『桃太郎』

桃太郎が桃から産まれたにしろ、自分で産んだにしろ、お婆さんにとって桃太郎は大切な一人息子である。

やがて、すくすくと成長した桃太郎は、鬼退治に単身乗り込むと言い出す。

当然、お爺さんお婆さんは反対しただろう。可愛がって大事に育てた子を、どうして戦地に赴かせようという気になるのか。

だが同時に、特殊な出自を持つ桃太郎に、宿命を見いだしもしただろう。

「鬼を倒すなら、この子しかいない」

悩んだ末、送り出すことを決めた桃太郎に、お婆さんはきび団子を渡す。

当時、甘味は貴重であったと思われる。お婆さんは、生活も苦しい中、貴重な甘味をなんとか入手して団子を作ったのだ。

二度と帰らぬかもしれない息子に、せめて美味しい物を食べさせてやりたいという一心で。

送り出すと決めた以上、お婆さんは、もう自分の気持ちを、本当は行かないで欲しいという気持ちを口にはしない。

ただ、今できる最大の気遣いとして、愛する息子にきび団子を渡したのだ。

つまり『桃太郎』のテーマとは、「子に対する親の愛と勇気」なのではないだろうか。

さいごに

その後、桃太郎は鬼に対し勝利を収め、物語は幕を下ろす。

先ほど述べたお婆さんの心情は私の妄想に過ぎず、果たして桃太郎にそれが伝わっていたのか、本編では一切描写されていない。

だが、推測することは可能だ。

媒体によって語りや内容が微妙に異なるが、次のような描写が存在する。

旅路の途中、家来となる出会った動物たちに桃太郎はこう語っている。

「これは日本一のきび団子だ」と。

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